首が痛い、肩が痛い、眠れない、慢性的な便秘などといった症状があり病院で検査をしたが、特に異常はなく「自律神経失調症」と診断された経験はありませんか?
自律神経失調症という病名は非常に広い定義として使われているため、なかなか理解しにくい病態です。自律神経系にさまざまな不定愁訴があり、臨床検査では器官などに病変が認められない状態で、かつ明らかな精神障害がない場合、自律神経失調症と診断されます。
身体に不調を感じて、病院でさまざまな検査を受けたが身体疾患は見つからず、心療内科を受診することになったという方も増えています。
前述のとおり自律神経失調症はなかなか理解しにくいため、この診断名に曖昧さや不安感を覚える方は多くいらっしゃいます。
大切なのは、まず自律神経というものを理解し、ご自身の身体で何が起こっているのかを知ることです。
人の身体には、手足など自分の意志でコントロールできる部分と心臓や胃腸など自分の意志ではコントロールできない部分があります。
この自分の意志ではコントロールできない部分である呼吸・血液循環・消化吸収・排泄・内分泌(ホルモン)など、生命活動に関わる身体の恒常性を維持するために重要な役割を担っているのが「自律神経」です。この働きのおかげで睡眠中も心臓は動き、食べたものは消化吸収され栄養分は身体に蓄えられます。
自律神経は交感神経と副交感神経から構成され、それぞれの走行経路は別々ですが、それぞれが心臓や血管・気管支・胃腸などの器官につながっています。器官は交感神経と副交感神経の双方の支配を受けている状態です。そのためバランスが重要になります。双方の働きのバランスが崩れると、便秘・不眠・頭痛・耳鳴り・めまい生理不順を始め、多岐にわたる身体の不調があらわれます。
また、自律神経は身体の機能を調整するホルモンと身体の防衛システムである免疫機構と密接に関わっています。そのため、複数の不調や症状が重なってあらわれたり、全身症状の倦怠感や疲労感、精神症状ではイライラしたり記憶力や集中力の低下など症状も多様です。
自律神経失調症の症状は身体的な症状と精神的な症状があり、部分症状であったり全身症状であったり多岐にわたります。
身体的症状 |
頭痛・肩こり・首の痛み・関節痛・めまい・吐き気・動悸・多汗・ 便秘・下痢・頻尿・生理不順・勃起障害・慢性疲労・倦怠感など |
精神的症状 | イライラ・不安感・不眠・意欲低下・集中力低下など |
自律神経失調症は複数の症状があらわれ、複数の薬が対処療法として処方される場合が多く、それは根本治療ではないために長く悩まされることになります。
交感神経は活動時に優位になり、身体が緊張状態に対応した態勢をとる時に働きます。副交感神経は休息時に優位になり、身体が安息状態になるように働きます。
仕事のプレッシャー・人間関係・過剰労働など社会的要因や騒音・天候などの環境的要因、寝不足・偏った食事など不規則な生活、加えて現在ではスマートフォンなどのデジタル機器の影響で常に交感神経が優位になっています。緊張状態が続いている身体は、副交感神経がうまく機能しにくく休息がとれません。これが自律神経のバランスが崩れた状態です。
この状態が恒常的になっていると身体に不調や症状としてあらわれてきます。臨床検査で器官などに異常が認められないため、自律神経失調症を軽んじてしまう傾向にあります。
しかし、ご自身の日常生活の中で神経異常が起こってしまっている身体状況を自覚しましょう。放置したままにすると症状が発生している器官に負担がかかり続け、器質的な変異が起こると大病につながります。
生活を見直しながら根本的な治療をおすすめします。
自律神経の乱れはストレスや緊張、心身の疲労で交感神経が過剰に働いている状態です。
鍼治療、灸治療のそれぞれの刺激は中枢神経を介して、過緊張になってバランスを崩している自律神経を整える働きがあります。
自律神経は大まかには背骨のそばを走行しているので、首肩のコリや疲労、悪い姿勢などは自律神経に負担をかけてしまいます。
鍼治療は、痛みの治療、特に慢性痛に効果を発揮します。頭痛、肩こり、耳鳴りなどの症状があらわれている部位の疼痛緩和や症状の軽減に適しています。鍼は刺激した組織に白血球を誘導して、障害を受けていた細胞を活性化させます。筋肉の深部のコリまで直接届く鍼治療は、筋肉を緩める効果が高く、血行を促進させて発痛物質を排出させます。また、鍼の刺激は信号なって中枢神経へ伝達され、痛みを感じる脳を鎮静化します。
痛みの少ない身体にすることで苦痛や不安が減り、日々を快適に過ごすことができます。
灸治療は、自律神経症状としてあらわれる便秘にとても有効です。排便に必要な腸の蠕動運動は副交感神経が優位な状態で促進されます。灸の温熱刺激は深いリラックス効果があり自律神経を整え、腸の冷えを改善して血行を促進します。
免疫細胞は腸に多く集まっているため、腸内環境を整えることは免疫機構の正常化にもつながります。
症状に対しての直接的なアプローチと交感神経の活動の強まり過ぎを鎮めて緊張状態を解き、自律神経のバランスを整えていくことで全身を診ながら根本治療をしていきます。
また、自律神経失調症の原因となった日常生活の過ごし方についてもアドバイスを行っていくことで、より良い身体作りを目指していきます。